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メンタルマジックと偽超能力、トリックで人を騙すマジシャンのモラルについて

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世界最古のマジック解説本として有名な「妖術の開示」というものがあります。1584年にイギリスで発行されたもので原題は「THE DISCOVERIE OF WITCHCRAFT」。本来はマジック解説本などではなく、当時横行していた魔女裁判、魔女狩りを批判するためにレジナルド・スコットという議会議員が書いたものです。当時はマジックの不思議さは魔女が行う本物の魔法と混同されていたのですね。

「妖術の開示」について紹介したいわけではありません。トリックを用いて行うマジックが本物の魔法や奇蹟と混同されていた時代があるという話です。そしてそれは現代でも超能力と名を変えて繰り返されています。

今日はトリックを用いて人を騙すうえで守らなければいけないモラルについての僕の考えを書いていきます。

メンタルマジックと超能力

僕の超能力に対する認識

僕の超能力に対する認識は「インチキ」です。

「超能力など存在しない」という話になると「超能力とは人を超えた力のことだ。野球選手のイチローのような他の人にはない素晴らしい才能や能力も超能力なんだ」などと言ってはぐらかす人もいますが、そのような言葉に意味はありません。ここで言う超能力とは科学を超越した力、テレパシーやサイコキネシスのことです。

僕はいわゆる超能力者はすべてトリックを用いたインチキを見せているのだと思っています。

ジェームス・ランディの100万ドルチャレンジのようにトリックの専門家が参加して超能力を検証する場で超能力の存在を示せた超能力者は未だかつていません。

僕自身、魔法や超能力に対する憧れはありますし、実在してくれたらとても嬉しいのですが、残念ながら現状では超能力の存在を肯定することはできません。

超能力を模したメンタルマジック

マジックにはメンタルマジックと呼ばれるジャンルがあります。メンタルマジックは超能力を模した演出のマジックです。メンタリズムとも呼ばれます。

メンタルマジックは元々はその名の通り、メンタル、つまり心を読む・操る様子を見せるマジックだと思うのですが、現代ではスプーン曲げなどのサイコキネシスや予言といった幅広い現象を含んだ言葉になっています。現象の種類よりも超能力風の演出になっているかのほうがポイントだということですね。

メンタルマジックはクロースアップマジックの中でも不思議さが強くとてもインパクトがあります。僕もメンタルマジックは大好きでよく演じています。

でもメンタルマジックは扱いを間違えると相手に本当の超能力者と思われることがあります。僕なんかマジシャンを名乗っているのに、「本当は超能力なんですよね!?」と真剣に言われたことも何度もあります。

そしてこれを利用して超能力者になりすましている人たちもいるわけです。

なぜ超能力者のフリをしてしまうのか?

僕が見たインチキ超能力者

僕の故郷に有名な超能力を見せる喫茶店がありました。喫茶店と言っても好きなときにふらっと入ってコーヒーを飲むような店ではありません。予約制で入場時間もショーの時間も決まっています。

元は普通の喫茶店だったのでしょうが店主の見せる超能力が話題となり、一部のトンデモ本で超能力喫茶店として紹介され、いつの間にか店主の超能力ショーがメインになっていったようです。

と言っても店主もなかなかずる賢くておおっぴらに超能力と言っているわけではありません。お店の看板にはマジックパーラーと書かれているのです。

でも実際にお店で演じられるのはまさに超能力ショーです。

演じる現象はスプーンを曲げたり、お札が宙に浮いたり、観客の心を読んだりという典型的なメンタルマジックが中心で、ショーの雰囲気も明るいのですが、マジックの合間合間に「信じれば力が湧いてくる」とかある意味宗教的な話をはさみ、超能力者を演じてみせるわけです。

もちろんほとんどの観客はマジックショーだとわかっているでしょうが、中には本当に超能力と思う観客もいて、ショーが終わるとそうした観客を集めて体調が良くなると念を送ったり、「私が念を込めて曲げたからご利益がある」とグニャグニャに曲がったスプーンを売りつけたりしていました。

このようにマジックを悪用すると本当に超能力者になりすませるわけです。

このお店はマジック界でも有名で、昔から批判もありますが、それでも売りつけているものはせいぜい数千円くらいだったように思います。それでも北は北海道から南は沖縄まで日本全国からこのお店を目当てにやってくる人がいたり、予約も常にいっぱいで信者の力はすごいものだと思ったのです。

もちろん更にディープなところにはもっと高額なものを売りつける、いわゆる霊感商法のようなものにトリックを悪用しているケースもあるでしょう。

超能力者のフリをすれば名誉も金も手に入る

なぜトリックで超能力者のフリをするのかといえば、超能力者のフリをすれば名誉も金も手に入るからでしょう。

うえで紹介した超能力喫茶店も高額な商品は売りつけていないものの、超能力が話題になったおかげで常に予約はいっぱいで儲かっているでしょう。

あの有名なユリ・ゲラーも元々はイスラエルでマジシャンをやっていたものの泣かず飛ばずで超能力者に転向したのです。

マジックは素晴らしいエンターテインメントですが、本当に超能力が存在する(と信じさせてくれる)インパクトには敵いません。それにマジシャンを志す人に比べて偽超能力者に成りすまそうとする人は多くはありませんから、競争も少なくて済むのです。

トリックで人を騙すマジシャンのモラル

マジックにはある種の力があります。人の心を動かす力です。トリックの存在を隠してしまえば超能力者のフリもできるのです。自分の信者を集めることもできるわけです。

でもそれはやはりやってはいけないことです。

人を騙すことで自分の名声を高めたりお金儲けをすることを正しいことだととても言えません。

マジックはトリックで人を騙します。しかしマジックは虚構です。フィクションだとわかっているからエンターテインメントなのです。

もちろんハリー・ポッターが映画の中で「これはフィクションだよ。魔法なんてないよ」などと言わないように、マジックを演じるときは「これはトリックで酢よ」と言わないほうがいいでしょう。

でも、本当にマジックの持つ不思議を現実だと錯覚してしまう人がいたら、それはフィクションだと教えてあげるのもマジシャンの務めではないかと思うのです。